デザイナーが事業に向き合う
会員数2,000万人から、カーライフを支えるプラットフォームへ
CONTEXT
ENEOS株式会社が提供する「ENEOS公式アプリ」は、サービスステーションでの給油や洗車をスムーズに利用できるほか、車にまつわる情報を一元管理できる「カーライフサポートアプリ」です。サイバーエージェントでは、2024年春からデザイン構想支援で伴走し、同年5月のリニューアルからわずか8カ月で、会員数は1,500万人に倍増。2025年12月には会員数2,000万人を達成しました。従来の給油決済ツールから、お客様の車両データを活かして、カーライフを支える多機能プラットフォームへ。その進化に伴走しています。
ENEOS株式会社の今野氏、達川氏と、ご支援当初からデザイナーとしてリードしてきたサイバーエージェントの高木が、この2年半とこれからを語ります。
- AWARDS
- GOOD DESIGN AWARD 2025
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会員数
- 約 750 万人 2,100 万人
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会員増加率
- 最大約 3 倍
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MAU
- 最大約 1.3 倍
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ストア評価
- ★2 最大 ★4
PEOPLE
ENEOS株式会社
今野 拓也
マーケティング部 アプリ開発・運用グループ
グループマネージャー
ENEOS株式会社
達川 教輔
マーケティング部 アプリ開発・運用グループ
上席担当マネージャー
株式会社サイバーエージェント
高木 和真
DXコンサルティング本部 DXDesign室
デザイナー
POINT
- 01 登録10分から最短1分へ。現場起点の改善が会員数2,000万人突破を支えた。
- 02 マイカーページを起点に、給油アプリからカーライフを支える多機能プラットフォームへ。
- 03 デザインを起点に、お客様目線で議論が白熱。思わぬアイデアが生まれる。
- 04 デザイナーが戦略から関わり、戦略がプロダクトまで一貫する。
現場の課題に着目した登録機能改善で会員数が急増
達川氏サイバーエージェントさんとお取り組みを開始して最初のリリースが、会員登録フローの改善だったと思います。これが一番印象に残っています。
これまではメールアドレスでしか会員登録ができなかったところを、LINEと連携できるようにしたというリリースでした。これにより会員数が目に見えて爆発的に増えたのは、かなり大きかったと思っています。
高木このリリースでは、サービスステーションのスタッフさんがお客様にお声がけしてアプリをダウンロードいただくケースに着目しました。当初、登録までに個人情報やメールアドレスの入力で10分ほどかかり、途中で断念されるケースが多くありました。それが、LINE連携によって、最短1分で登録が完了するようになりました。
サービスステーションでの声がけから登録までの流れがスムーズになり、会員数増加につながったと考えています。
達川氏アプリのリリース自体は2022年7月でした。当初の想定からすると、会員数の伸びは大幅な前倒しとなりました。サービスステーションの現場の課題に着目した改善を一緒に積み重ねられたことが大きく、リリースから4年足らずで2,000万人を突破しています。その意味でも、アプリの方向性を大きく変えたリリースだったと思っています。
高木会員数が爆発的に増えたあと、連動してさまざまなビジネス指標も向上しました。会員数が伸びても利用率が落ちなかったのは、手応えのある結果でした。
達川氏UIなどを置き去りにせず、ちゃんと改善してきたのが効いたんだろうと思います。会員が増えても使い勝手が悪かったら、普通なら利用率はどんどん下がっていきますが、継続的にUI/UXも改善して、しっかりと下地を固めつつ進められたことが大きかったと思っています。
2025年度にグッドデザイン賞も受賞し、社内外から評価をいただけていると感じています。
給油アプリから、カーライフを支える多機能プラットフォームへ
達川氏もともとは、サービスステーションでの給油を、より便利にご利用いただくための体験づくりが中心でした。それが、会員数が増えることで、できることの幅が一気に広がりました。
今野氏お客様のカーライフ全体に寄り添える体験をつくりたい、と考えるようになりました。アプリの役割そのものが変わってきている感覚があります。
高木そうですね。給油をお得に、便利にするアプリにとどまらず、お客様のカーライフ自体を総合的にサポートする価値提供を目指し、お客様のカーライフを支える多機能プラットフォームになることを目指しています。
その軸足をつくるきっかけになったのが、2025年1月にリリースしたマイカーページです。
直近はさらに、お客様だけでなく特約店やサービスステーションに向けた価値提供も含めて、施策の検討も進めています。プロダクトとしても、会員を増やす段階から、蓄積された車両データを価値に変える段階へと移ってきていると感じます。
お客様視点の議論が白熱し、アイデアが機能になる
今野氏デザインモックアップを見ながら決めていくという意思決定のプロセスは、やはりスピード感があるなと思います。細かい点だとボタンの位置や、色のグラデーションなども「こうじゃない?」と、その場で決められます。責任者クラスが参加している場で決めていけるので、意思決定も施策進行も速く、両社にとって良いスキームだと感じています。
達川氏会議に参加している人が、成果物のイメージをつかみやすいのが一番大きいと思います。ドキュメントベースで議論するとどうしても空中戦になりますが、目に見えるものがあると議論が進みやすく、思いもよらないアイデアも出てくるので、すごく話がしやすいです。
普段堅い議題が多い中で、モックアップをベースに改善案や新機能をディスカッションする場では、少し砕けた雰囲気で、派生してさまざまな妄想も出てきました。そのときに出たアイデアを、サイバーエージェントさんは次の週にはモックアップで形にしてくださいました。そこからさらに「追加でこういう機能があるといいんじゃないか」といった話も膨らみました。目に見える形があるからこそ議論も加速して、楽しく進めることができたと思っています。
高木我々がまずモックアップをお出しするのも、もちろん機能の検討を加速させることは前提としつつ、いかに場の空気を含めて楽しく進められるか、ということを心がけていました。
マイカー相場機能や燃費のメーター機能など、議論の中で生まれた情緒的な体験を伴う機能をリリースすると、お客様から「使っていて楽しい」というお声をいただくこともありました。
その場の楽しい雰囲気や、自分たちがワクワクするものが、機能としてアプリに反映されて世の中に出ていきます。数値目標を着実に追うことはもちろん前提ですが、自分たちも楽しみながらつくるという姿勢も大切にしていきたいと思っています。
デザイナーが事業と向き合い、ビジネスを前に進める
今野氏デザイナーさんと向き合うのは表層のデザインを整えるフェーズに入ってからで、施策やプロジェクトの後期という印象がありますが、高木さんには、会社としての戦略や価値観、体験といった、より上位のレイヤーまで含めて日々向き合っていただいていると感じます。戦略への理解があるうえで、スピーディーにモックアップなどの形にしてもらえるので、スムーズに意思決定ができているなと感じます。
達川氏一般的に、戦略・デザイン・システムといった役割が縦割りで分かれている体制では、形になるまでに複数の工程を経るぶん、当初の意図が伝わりきらないことも起こりがちだと思います。
サイバーエージェントさんの場合は、直接お伝えした意図を、そのままデザインとして形にしていただけていると感じており、すごく助かっています。また、一方が主導するのではなく、お互いに意見を出し合いながら取り組めていると感じます。
高木私たちには想像が及びにくい現場の方のご苦労などをダイレクトにご意見としていただけることもあり、私たちからの一方的なご提案でなく、実際の現場の視点と組み合わさって最適な解を一緒に模索することができているように感じます。より密度の高いコミュニケーションが取れるようになり、新たな視点も得られて刺激になっています。
今野氏我々のような事業会社だと、社内で通りそうになっていた意見が、実は少し偏っていたということもあります。
専門性のあるサイバーエージェントさんがいることによって、バイアスをかけずにお客様視点で考えたうえで「いや、そうじゃないんですよね」など、適切なご意見を近い距離感で言っていただけます。そうすると、「ああ、たしかにそうか」と我々も認識を改める。こうしたことは少なくなく、とても良いことだと思っています。
外部の高木さんが指摘してくださるからこそ、納得感があるのかもしれません。
高木パートナーという関係の中で、デザインに関して責任を持って、踏み込んだことまで言わせていただける距離感にあるのは、やりがいがあります。
勇気が必要とされる瞬間もありますが、お伝えすべきと思った点はきちんとお伝えしています。その結果として良いものができ、成果にもつながってきていると感じます。今後もこうした距離感で進めていけることは、双方にとって意味のあることだと考えています。
VOICE
これから、サイバーエージェントに期待すること
達川氏これまでと変わらず我々に寄り添い、伴走していただきたいと思っています。我々が発注側という立場ではありますが、あまりそこは意識せず、パートナーとして切磋琢磨していけたら良いなと思います。
デザインに関して本当に信頼していますし、良いものができていると思っています。品質も一緒に上げていきたい。外面だけ良くても品質が伴わない、というものにならないように。その点は力を入れて進めていけたらと考えています。
今野氏昨今のAI時代に選ばれるチャネルであるためには、どうあるべきか。これは常に考えています。明確な答えはなく難しいテーマですが、デザインという観点で言えば、人間の感性と判断力はAIにはないと思っています。それを体現してくれるのが、UI/UXのプロである高木さんやサイバーエージェントの皆さんなのだと思っています。
そういう観点でぜひご提案いただきたいですし、継続して協議していきたいと思っています。
また、AIを使えばアウトプットはある程度つくれるようになったからこそ、我々は「なぜこういう機能が必要なのか」「なぜつくるのか」という本質的な問いに、より多くの時間を割けるようになりました。その問いに対しては、ぜひサイバーエージェントさんの知見をお借りしたい。発注者側と受託者側という関係性ではなく、共創して、世の中にインパクトのある事業を一緒につくっていく。そういうパートナーであってほしいと思います。
高木土台となる品質を担保しながら、まだアプローチできていないユーザーの体験、そして特約店・サービスステーションの方々への価値提供を追求し続けたいと考えています。そのためにも、より新しい進め方を取り入れ、より良いものをつくれるチームに進化していけるように取り組んでいきます。