ドコモ×CAで挑む、数千万人のユーザー体験を向上させるための横軸活動とは
CONTEXT
数千万人のユーザー基盤を持つ国内最大規模の通信キャリア、NTTドコモ(以下、ドコモ)。同社は2024年10月、各部署の取り組みを可視化し、組織に横串を通す場として、ショップに届くご意見やSNSの反響、さらに社員が気づいた課題までを一箇所に集約して議論する「CX向上委員会」を立ち上げました。
時代の変化に合わせて推進している「顧客起点の事業運営」において、当社は現場への常駐を通じて深く並走を続けてきました。社内の意識変革を促し、現在はプロダクトの継続的な改善・成長を共に担うパートナーへと関係性を発展させてきた両社。ドコモが持つ強固な事業基盤に、当社のプロダクトへの圧倒的な熱量と機動力を掛け合わせ、どのようにしてUI/UXを軸とした持続的な事業成長を共創しているのか。一つのチームとして挑んだリアルな変革の軌跡に迫ります。
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回線契約者数(2026年3月)
- 9,221 万回線
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ご支援対象サービス数
- 40 以上
PEOPLE
(株)NTTドコモ
猪俣 俊洋
コンシューマサービス本部 マーケティング部
顧客ロイヤルティ担当部長
(株)サイバーエージェント
野々山 幸司
DXコンサルティング本部 DXDesign室
UXデザイナー
POINT
- 01 トップデザイナーが出向いて膝を突き合わせた議論が、外部の視点を受け入れる意識を生んだ
- 02 現場との対話を重ね、徐々に設計の初期段階から品質を担保する意識が根づき始めた
- 03 常駐でドコモ社員に近い目線で各サービスに寄り添い、横断の仕組みづくりへと活動が広がった
事業を担うデザイナーが同じ熱量で現場と向き合うことで起こった、意識の変化
CX向上委員会の立ち上げに向けて、主要アプリのUXスコアリング評価が実施されました。デジタルサービスのユーザー体験をアクセシビリティとユーザビリティの二軸で評価し、課題や改善点を発見する取り組みです。プロダクトに真剣に向き合っている部署ほど議論は熱を帯び、強力な競合と戦う最前線の担当部署ではプライドと熱量がぶつかり合い、場は緊迫した空気に包まれました。
そのリアルな温度感を察知したサイバーエージェントの常駐メンバーが即座に動きました。「ABEMA」を手掛け、藤田会長と直接議論しながらプロダクトをつくりこんできたトップクリエイターをドコモのオフィスに呼び寄せ、現場と膝を突き合わせた対話の場を設けたのです。「確かにその視点はプロダクトをさらに良くする」という認識が現場に生まれ、議論は有意義な社内改善へと発展しました。事業主の目線で本気でプロダクトに向き合うデザイナーの姿勢が、外部有識者の意見を取り入れるという意識を現場に根づかせるきっかけとなりました。
サイバーエージェントが数々の自社サービスを創り上げてきた経験は、現場と同じ目線・同じ熱量でプロダクトに向き合うことを可能にしました。ただし、すべての議論が最初から円滑に進んだわけではありません。成果に繋がらない局面を深く掘り下げると、デザインが「聖域化」されることで周囲が「自分にはわからないから」と一歩引いてしまう心理的なハードルが浮かび上がってきました。
ドコモのすべてのチームがユーザー視点で改善案を考えられるようになること——それを目指し、「UXデザインは誰もが等しく参加できるもの」と感じてもらえるよう、丁寧なコミュニケーションを重ねることがもう一つの重要なアプローチとなっていきました。
プロダクト設計初期段階から品質を担保する意識が根づき始める
現場との向き合いを積み重ねる中で、変化は現場にとどまらず、「外部の有識者の客観的な声をしっかり取り入れよう」という意識が、現場だけでなく経営層にまで浸透していきました。これは、今までのドコモにはあまりなかった新しい視点です。
そうした変化の中で特に象徴的だったのが、新アプリのリリース計画が立ち上がったときのことです。ドコモ社内の部長から「設計段階から外部の専門的な視点を入れて、客観的に評価を受けること」という承認条件がつきました。従来の開発プロセスでは、リリース直前に試験やチェックを行うのが一般的で、改善点が見つかっても全体スケジュールやシステムへの影響から修正が難しいという構造的な課題がありました。計画通りのリリースが最優先されるあまり、品質の微調整が後手に回る傾向にあったのです。
しかし、新アプリのリリース計画時は、サイバーエージェントから設計の早い段階で100項目近い改善提案が共有され、担当部署も「今の段階なら直せます!」と前向きに取り組めました。
早い段階で外部の視点を取り入れるプロセスができたことは、大きな前進となりました。
常駐を通して組織の内側から解像度を上げ、ドコモの言語で最適解を届ける
常駐する前後でdocomo様の課題や組織の文化に対する解像度が圧倒的に上がり、サイバーエージェントの言語ではなくドコモさんの言語で会話し、より精度の高いアウトプットを出すことができるようになったと感じています。
常駐という形式が生む強みは、緊急時の即応力だけではありません。別プロジェクトの課題や情報共有がスピーディになり、組織横断の課題をタイムリーに把握できるようになりました。日々の社内の動きを肌で感じ取ることで、ドコモ社員に近い目線と感覚を持った提案が可能になり、組織の状況を踏まえた適切なタイミングでのアプローチが、課題解決の精度と速度を高めています。
この蓄積は、アウトプットの質にも直結しています。常駐を経ることでドコモの課題や組織文化への解像度が格段に上がり、サイバーエージェントの言語ではなくドコモの言語で対話できるようになりました。その解像度があってこそ、全サービスの統一基準となるデザインガイドラインの策定や、それを各サービスの継続的な改善に活用するための仕組みづくりにまで踏み込んだ関与が実現しています。
VOICE
AI時代におけるパートナーシップのあり方とは
猪俣氏この3年間で社内の奥深くに眠っていた本質的な課題に、ようやく光を当てることができた感覚があります。その明確になった課題を突破する上で、いま非常に可能性を感じているのが、AIの活用です。これまでにないスピードで課題を解決できるのではないかと期待しています。
ただ、やはり最後は「人側の視点や気づき」が重要になるのだと感じています。
例えば、とある案件のLP(ランディングページ)画面を野々山さんがブラッシュアップしてくれた際、ドコモ独自の強みを表す要素を、意図的に一歩前に出して明記してくれていたんです。理由を聞くと「自分が一人のユーザーとしてドコモのサービスを使う中で、ここが一番の価値だと実感したからです」と。
そこにはAIには決して出せない、プロダクトへの深い理解と、人間の明確な意思がありました。その試行錯誤のプロセスをFigma上でリアルタイムに見られたことも、大きな信頼感に繋がりましたね。
野々山ドコモ様のプロジェクトの最大の醍醐味は、やはりその圧倒的な規模です。少しのデザイン変更が数千万人の体験を変え、ビジネスの成果にダイレクトに繋がっていくことは、クリエイターとして非常にやりがいがあります。
AIが良いものを一瞬で出せる時代だからこそ、実際のプロダクトに組み込むための細かな検証や調整、最終的な品質を見極めて担保する、人間側の感性や判断軸をさらに磨き、AIと共生しながらドコモ様に提供できる価値の幅を全方位に広げていきたいと考えています。
膝を突き合わせて話をしてくれたことで、現場の受け止め方がガラッと変わりました。サイバーエージェントの皆さんが、ドコモのプロダクトをこれほど真剣に考えてくれているんだという想いが社内に伝わった瞬間でした。